教育関連ニュース

2021-05-03 07:00:00

特別支援から創造的な学びまで、マイクロソフト認定教育イノベーターが紹介するICT活用の実践

2021.4.26『Impress Watch』より。

 

ICTを日頃から授業や学校生活で活かす教育者は、どのように活用しているのだろうか。

 

GIGAスクールをきっかけに多くの教育者がICT活用にチャレンジし始めている中、教育者同士の情報共有の場は貴重だ。

 

マイクロソフト認定教育イノベーター(以下、MIEE)らは、2040年に活躍し、社会を担う子どもたちのための教育について語り合う教育カンファレンス「Microsoft Education Day 2021」を2021年2月27日に開催。

 

3つのセミナーをレポートした前編に続き、後編の本稿では、特別支援やGIGAスクールなど多彩なテーマが取り上げられた分科会の模様をお届けする。

 

※本文中の所属は、2021年2月取材当時のもの。

 

■ 「ICTだからこそできる『つながり』と子どもの心のケア」

(両川晃子氏、田中愛教諭、小林義安教諭、関口あさか教諭、圓井健史教諭、山口禎恵教諭、福島学氏)

 

コロナ禍でさまざまな制限のある日々を送っている子どもたち。

 

スクールカウンセラーとして多い時には1か月に100ケース以上の親子と接してきた両川晃子氏は、「まだまだ子どもたちには心のケアが必要だが、カウンセラーは足りていない」と語る。そこで、すべての大人が子どもたちの困難に向き合えるファーストタッチができれば予防的対応につながるとして、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが出している『子どものための心理的応急処置(PFA)』を紹介した。

 

両川氏は子どもの心をケアするPFAは決して専門家にしかできないものではないと前置きしたうえで、「見る・聴く・つなぐ」という3つのポイントがあると言及。

 

それぞれについて、周りの大人はどのようなことができるかを説明した。

 

また、子ども同士、あるいは子どもと教員を「つなぐ」際に、ICTの活用が大きな役割を担うことも強調。「遊びや学びなど、子どもたちが必要としている特有のニーズを理解し、情報を提供することが支援につながる」と述べた。

 

後半は、子どもたちとできるICTのつながりとして、Excelを使った共同編集を紹介した。

 

「あなたが今一番話したい人は誰ですか?」「一番楽しかったことは何ですか?」など5問の質問について参加者が一斉記入し、コミュニケーションの広がりを感じた。

 

その後は、「コロナ禍での子どもの様子で困っていること」について、両川氏に具体的なアドバイスを求める時間に。

 

家庭への声かけなど教育者らが抱えている課題を共有した。両川氏は「違う立場や違う学校の先生と一緒に話し、学び合う場の大切さに気づかされた」とコメント。

 

教育現場ではカウンセラーの巡回の機会が限られていて、教員が自身の悩みや課題を共有し合う機会はそう多くない。

 

こうして専門家から直接新しい知見が得る時間は、まさにICTだからこそできる「つながり」だと感じられた。

 

■ 「特別支援×Teams×WELL-BEING」(豊吉淳教諭、海老沢穣教諭、 杉岡伸作教諭、滑川真衣教諭)

 

東京都の特別支援学校に務める教員の間で、ICTを活用してWell-being(心身、社会的健康や幸福)を高める学びが注目を集めている。

 

本分科会では「特別支援×Teams×WELL-BEING」と題して、4つの特別支援学校の教諭がTeamsを活用した教育実践を発表し、オンラインでつながることで生み出される特別支援教育の可能性について熱い議論を交わした。

 

東京都立青峰学園の滑川真衣教諭はTeamsで行なったオンライン文化祭について紹介。

 

ビデオ会議で文化祭実行委員が各クラスに生配信をしたオープニングの模様や、生徒が計53本の動画コンテンツを制作し、Google Formsを使って動画コンテストを実施した取り組みについて発表した。

 

2014年から東京都立石神井特別支援学校でiPadを活用し、子どもたちの創造性と表現力を引き出す教育活動を行う海老沢穣教諭は、PTAと連携したSDGsの取り組みについて発表。

 

産休中の元担任と子どもたちをTeamsでつなぎ、赤ちゃんを紹介してもらった実践を紹介した。

 

続いて「障害のある子どもたちにとってICTは武器になる」と語ったのは東京都立葛飾ろう学校 杉岡伸作教諭だ。

 

3カ月前に本格導入したMicrosoft 365を活用し、協働的な学びを深める生徒の取り組みについて発表。

 

その中で、聴覚障害のある生徒が、音声認識を使って文章を入力するコミュニケーションツール「UDトーク」を活用した学びについて語るインタビューが紹介された。

 

それを受け、東京都立多摩桜の丘学園 豊吉淳教諭は「生徒がICTを活用した学びを自分の言葉で表現し、その姿に成長ぶりを感じる伸作さんのコメントに大変感動した」とコメント。

 

自身もMicrosoft 365やTeamsを活用した東京都立多摩桜の丘学園の実践を紹介するなかで、「特別支援教育にWELL-BEINGを加えることで、これから押し寄せてくるGIGA時代をより良い状態で受け止めて前に進む力にしたい」と感想を述べた。

 

■ 「Microsoft教育営業マンに聞くICT支援員が知りたい、Windowsで何ができる?」(福島学氏、五十嵐晶子氏、石山将氏)

 

東京都と神奈川県でICT支援員を務める、「合同会社かんがえる」の代表・五十嵐晶子氏と日本マイクロソフト文教部門の石山将氏が主催する分科会では、Microsoft 365のアカウント管理や運用などについて、あらかじめ教員たちから寄せられた質問や要望を石山氏に投げかけた。

 

具体的には、「Office365とMicrosoft 365の違い」や「OneDrive とSharePointの違い」、「年度更新」、「担当者の引継ぎ」、「転入転出」のやり方のほか、快適なTeamsの活用など、1人1台環境を支えるテクニカルな部分について、学校現場として知っておきたい知識が多く挙げられた。

 

ほかにも、分科会ではグループ内でのStream共有と権限設定の方法やSharePointによる書道作品展示の方法といった、学校での具体的な活用を前提とした使い方の紹介も。

 

五十嵐氏は新年度を迎えるにあたって、非常に価値のある情報交換が行えたと手ごたえを述べ、「Microsoftを支援する立場としても、管理運営をする立場としても明日使える知識がたくさんありました。

 

新年度活用がスタートしたところで、またさらに授業や校務で活用するための情報を集めていきたい」とコメントした。

 

■ 「この答案どう採点する?テストから見える子どもの困難さとICTでの支援方法」(村田美和氏、関口あさか教諭)

 

内容は理解できているのに、文字を正しく書くことや正しく計算することに困難さがあることで、テストで力を発揮できない子どもたちがいる。

 

そうした児童生徒の評価はどうすべきか。埼玉県立特別支援学校さいたま桜高等学園の関口あさか教諭は、2018年に実施した調査結果に基づいて、多くの教員は「正しく書く力」や「計算を正しく行う力」に重きを置きすぎることによって、理解度そのものを評価できていない傾向にあると発表した。

 

同調査は、関口教諭が東京大学先端科学技術研究センターの平林ルミ氏、高橋麻衣子氏と共同で実施したもの。

 

小学校と高校、900人以上の教員に対して、答えは合っているが漢字が間違っているものや、立式はできているのに計算ミスがあるといった内容の答案用紙を採点してもらった結果、漢字や計算など表記の段階でミスがあるとテストの評価に影響することが明らかとなった。

 

これについて関口教諭は「たとえば答えを書くという部分をキーボード入力に、計算を計算機に置き換えることは書字や計算の困難さを代替する一つの手段として、文科省も例示しているが、学校現場ではなかなか受け入れられない現状があるように感じた」と述べた。

 

前述の発表を受け、学習障害の専門家である高崎健康福祉大学の村田美和氏は、「学習障害は発達障害のひとつで、読み書きや計算など本人の努力ではどうしようもできない困難さがある」とコメント。

 

何度も練習させられることで学習意欲は低下し、その結果、教員から「やる気がない子」と判断されることを危惧している。

 

村田氏は、読み書きに困難を抱えるディスレクシアの中学生の事例を紹介。

 

鉛筆の代わりにSurfaceとスキャナ、プリンタを活用して授業に取り組んだ結果、1行しか書けなかった作文が、キーボード入力に変えたことで5つも作文を提出できたという。タイピングに代替されたことで、書き字の難しさやストレスが軽減し、学習へのモチベーションが上がり能力が正当に評価されることにつながった。

 

これらの事例を受け、村田氏は「今まで大事にされてきた書字そのものの正確性は、評価の対象から外れる可能性がある」と語り、ICTを活用した合理的は配慮が、今後より浸透することへの期待を込めた。

 

■ 「埼玉発!GIGAで広がる特別支援教育のOffice活用の可能性&大学×特別支援学校連携で生まれる新たな学び!」

(佐藤裕理教諭、大島啓輔教諭、苅田龍之介教諭)

 

「GIGAタブレットの種類を選ばず活用できるのが、Office教材のメリット」と語るのは、埼玉県立越谷西特別支援学校の佐藤裕理教諭だ。

 

PowerPointやExcelを使って作成した教材の紹介を通して、“一人ひとりが分かる、出来る”をテーマにした特別支援教育でのOffice活用について発表した。

 

具体的には、PowerPointの機能を組み合わせて作る「自分で操作できる時計アプリ」や「自分の考えをまとめやすい新聞テンプレート」、Excelの表を用いて「お金の量の見える化」した教材だ。

 

これらの教材は分科会中、参加者にクラウドで共有された。これらの教材は「彩特ICT/AT.labo」のサイトに公開されているので、ぜひ活用してほしい。

 

後半は、埼玉県内の特別支援学校や特別支援学級の教員からなる任意研究会「彩特ICT/AT.labo」の取り組みについて紹介。

 

日本工業大学と連携して行なった「Kinect」を用いた教材について、特別支援教育におけるICTとAT(アシスティブテクノロジー:支援機器・技術)を活用した教育の普及推進を目的に、日本工業大学と連携して、教材開発を行なっている。

 

同研究グループの埼玉県立騎西特別支援学校の高久聖也教諭はその一環として、Kinectを使用したアプリを紹介。

 

Kinectはカメラが映した映像とアプリ画面を合成する機器で、「身体の不器用さのある子どもたちが楽しみながら身体を動かせる教材」をテーマに「physical training system」や「Tree decoration」など、楽しく学べるアプリを開発した。

 

最近では大学だけでなく高校との連携も進み、毎年2回、その成果を発表する研究大会を行なっている。

 

これらの取り組みに寄せて、佐藤教諭は「開発を行なう学生の持つ特別支援学校に必要な教材のイメージと、実勢に現場で必要とされる教材のイメージをすり合わせていく中で、学生たちは障害への理解やユニバーサルデザインについての理解が深まった」と語った。

 

■ 「What is Creativity?工学院大学附属中学校・高等学校の教員を中心とした分科会」(中川千穂教諭、柳川和歌子教諭)

 

工学院大学附属中学校・高等学校のMIEEの教員による分科会は、中川千穂教諭、柳川和歌子教諭を中心に、教科、教務、部活、課外活動などさまざまな場面におけるMicrosoftツールの活用が紹介された。同校では、ものをつくる創造性だけでなく、考えることを創造性と捉えており、あらゆる教科で創造的な活動が取り入れられている。

 

具体的には「Microsoft Forms」(以下、Forms)を活用した数学、家庭科、体育の授業実践を紹介。Formsで小テストを行なう際に数式や関数を入力しやすくする工夫や、体育の授業で生徒からアンケートを募り、生活習慣の振り返りとコロナ禍での不安を見える化した取り組みを取り上げた。

 

また、「OneNote」を使った探究論文では、生徒たちが情報を共有し、互いに成果物を見られる環境の中で、「確認する→考える→行動する」というサイクルが生まれ、自身の問いを深めることができたという。

 

ほかにも、修学旅行の事前学習で行った中学2年生のプレゼンテーション大会では、写真の見栄えや文字の配置、サイズにまでこだわる姿が見られ、いかに伝わる内容に仕上げていくか、創造的に活動しているのが印象的だ。

 

参加者からは「考える力、創意工夫し問題を解決していく力、表現力それらを培うためにツールを使用されていることがよく分かった」という声や、「中高生の時代からあらゆるツールに触れることで、子どもたちが成長し社会に出たときに、自分たちがしたいことを今一番実現できるツールは何か、を確実に選ぶことが出来る能力も同時に身に着けられるのだろうなと実感した」という声が上がった。

 

■ 「GIGA元年、準備はできていますか?マイクロソフト認定教育イノベーター実践のヒント!」

 

上記の分科会やセミナーの合間に、小中高さまざまな校種のMIEEがICTの活用実践をプレゼンした。

 

GIGA元年と言われる今年、何から着手すべきか模索する教員に向けてマインクラフトやフォトアプリを使った授業や校務の効率化、withコロナ時代のオンライン授業のノウハウなど、簡単に始められる運用や一歩先を行く実践が紹介された。

 

「Microsoft Education Day Tokyo 2021」は1日にセミナーやワークショップ、分科会が濃縮され、MIEEの生きた実践による授業づくりのヒントが豊富に散りばめられていた。

 

地域や校種を越えて集まった参加者がリアルタイムで主催者に質問し、議論が深まるなどオンライン開催ならではの貴重な機会が生まれていたように思う。

 

未来を生きる子どもたちの教育について考える「Microsoft Education Day」が教育者の間で広く浸透し、ここで共有された知見がひとりでも多くの子どもたちに届くことを願う。

 

2021-05-02 07:00:00

早期英語教育は本当に必要? 思考力追いつかない“セミリンガル”と“バイリンガル”の分かれ道とは

2021.4.26『ORICON NEWS』より。

 

昨年から教育改革の一環として小学校での英語教育の強化が実施される中、就学前の幼児や赤ちゃんへの早期英語教育の需要も高まっている。

 

早いうちから英語に親しみ、学習能力を身に着けることで、その後の英語力を大きく左右されると言われる中で、思考力を育てるためには幼児は母国語で学習した方が良いとの声もある。

 

2言語を話すも思考力が追いつかない“セミリンガル”の壁もある中で、早期英語教育は本当に必要なのか。

 

 

■生後10ヵ月を境にLとRを聞き分けられなくなる? 早期教育の利点・欠点

 

 中国や韓国など、アジア各国において、政府のみならず各家庭が高い意識を持ち、着実に国全体の英語力を年々底上げしている。

 

そんな中、かねてから英語能力試験における日本の成績はアジア圏最低レベルで、『TOEFL iBT(2019)国別ランキング』において、「スピーキング」はアジア圏29ヵ国で最下位だった。

 

政治家の英語力の低さを諸外国からしばしば揶揄されることもある日本。

 

現状を打破するためには、やはり早期英語教育がカギになってくるのか。日本の英語教育の課題とは。

 

ベネッセの幼児・小学生向け英会話教室「ビースタジオ」の戦略推進部副部長の沓澤糸氏に聞いた。

 

――英語教育は何歳から始めるべきだとお考えですか。

 

【沓澤糸】それぞれのご家庭の考え方や環境に応じて、英語学習を始める時期はいつでも良いと思っています。

 

ただ、第二言語習得の研究で" Older is faster, younger is better. "とあるように、ある程度成長して思考力が身についてから学ぶことで効率よく習得することは出来ますが、幼児期から始めた方が聞き取りや発音の反復を通して、質の良い英語力が身につくと言われています。

 

まだ言葉が喋れない乳幼児期から英語の音に親しむなど、ストレスなく英語に向き合うことができます。

 

――大人になってから英語の発音取得は困難とも言われていますが、何歳までの英語教育が重要だとお考えですか。

 

【沓澤糸】生後10ヵ月を境に、LとRを聞き分けられなくなるという研究結果があります。

 

母語の基礎が固まると日本語を介して英語を聞くようになるので、その前の幼児期の段階の方が素直に英語の音を聞き取ることができると考えられています。

 

以前は、一定の時期を越えると言語の習得に限界があるという”臨界期”の考え方が主流でしたが、今では”敏感期”と言われ、一番習得しやすい時期、つまり聞き取りの能力がつきやすい時期を超えても、やり方次第で習得ができると言われています。

 

ただ、日本語に囲まれた環境で育ち、大人になってから英語の音を習得するとなると苦労するのは間違いないと思います。

 

ですので、生後10ヵ月とは言わなくても、幼児期や小学校低学年までに英語に親しむことが効果的であると私たちは考えています。

 

――早期に英語を学ぶことによるメリット、デメリットとして、どういったことが挙げられますか?

 

【沓澤糸】メリットとしてはまず、音の習得の早さがあると思います。

 

幼児期は恥ずかしいという気持ちやためらいなく、声に出すことができます。

 

また、子どもは同じことを何度でも飽きずに真似することも得意ですから、音を素直に聞き入れて、そのまま発音する練習も楽しみながら繰り返しスムーズに行うことができます。

 

発達段階として、小学校3年生頃から自分が他の子よりも苦手な部分があることなどに気づき、劣等感を持ち始めると言われていますが、語彙や表現を小さいうちから身につけていることで、一歩リードして有能感や自尊心を持って英語に向かっていくことができます。

 

――得意な分野は進んで勉強したくなりますもんね。

 

【沓澤糸】イタリアの研究によると、小学校から英語の学習を始めた子の方が、その後の読む力、書く力、聞く力にそれぞれアドバンテージがあるという結果が出ています。

 

また、言葉は外国への文化や歴史への入り口でもあるので、異文化への意識が高まったり、そこの人たちと交わることへの積極性へも繋がっていきます。

 

他にも、母語とは違う言語を学ぶことで言葉自体への興味が芽生えやすく、母語への敏感性が増すなどのメリットがあると言われています。

 

逆にデメリットとしては、英語学習をストレスに感じていた場合、早くから嫌悪感を抱いてしまうことです。子どもの状況を見ながら、英語習得をどのような時間・バランスで行うのか、各ご家庭での検討は必要だと思います。

 

■早期教育は自尊心の発達に影響? 身につきやすい幼児の英語の勉強方法とは

 

――英語にかぎらず、 “早期教育”は必要なのでしょうか。

 

【沓澤糸】その学習内容に対して子どもが興味を示しているか、楽しいと思っているかがとても重要です。

 

大人が必要と思っていても、そこが保証されていなければ子どもにとっては意欲や自信を削がれてしまい、自尊心の発達に影響が出てしまうこともあります。

 

その辺りは周りの大人が留意しなければいけないと思います。

 

同時に、子どもが自分で問いを立てる力もすごく重要で、与えられたことがわかるだけではなく、これはなんだろうって自分で手を伸ばしていくことも大切です。

 

そのため、全部大人がカリキュラムを組んでいくのではなく、子ども自身が興味を持って自主的に活動できる時間をしっかり作ってあげる、それを妨げない教育の在り方を考えてあげる必要があると思っています。

 

――早期英語教育は母語に悪影響があるとの声も上がっていますが、どのようにお考えですか。

 

【沓澤糸】英語を与える時間によるのではないかと考えています。

 

例えば、韓国は英語教育に非常に熱心ですが、英語を喋れるようになっても母語の発達や、韓国人としてのアイデンティティが育つのかということが問題視されており、日本でも同じようなことが指摘されています。

 

実際に駐在先にお子さまを連れて行った方にお話を伺うと、学校での授業に加え、母語を失わないために日本語の塾に通うなど、皆さん相当な努力をされています。ただ、日本で週に1~2時間の英語の学習を行う分には、ご家庭での保護者の方とのコニュニケーションなどほとんどの時間は母語で過ごしますので、母語の発達には影響しないと考えています。

 

――幼児の英語教育において、どのような学習方法が有効なのでしょうか。

 

【沓澤糸】英語教育には”理解可能なインプット”という言葉があり、その子が分かるインプットが一定割合ないと、子どもの意欲が削がれたり、新しい知識が得られない可能性があります。

 

なので、復習など理解出来る部分を入れながら、背伸びすれば出来る課題を一定量入れていくことが効果的だと考えられています。

 

――発音が良い・悪い子どもの分かれ道はどこにありますか。

 

【沓澤糸】上手く発音するためにはまず、そもそもその音を聞き取れることが必要です。日本語に囲まれた環境の中では、意識的に英語の音の特徴にフォーカスして、毎日その音に触れ続けることが効果的です。

 

そこからさらに聞き取れた音を発音するには、舌の使い方なども習得していくことが必要になってくると考えています。

 

――1日どれくらい学ぶべきなのでしょうか。

 

【沓澤糸】ネイティブ並みの言語習得には、累計で数千時間が必要などと言われています。

 

しかし赤ちゃんの時から1日10時間英語を聞いて、小学生の時期にその時間を達成すれば英語力がつくかといったらそうではありません。年齢に応じて習得する語彙や表現があるので、子どものうちに時間を詰めて英語だけを聞かせるだけで大人になってもネイティブ並みになるということではないと考えています。

 

バイリンガルを目指すなら両言語を均等に聞ける環境が最も理想ですが、その場合も、子どもが両言語をしっかり理解できる環境を整えることができなければ両言語とも不完全なセミリンガルになってしまう危険性もあります。英語学習は継続が大切ですので、やはり毎日少しずつでも触れていくことが大切だと思っています。

 

■バイリンガル教育には「1人1言語の原則」父と母が1言語だけを話し続けることが重要

 

――“セミリンガル”と“バイリンガル”の違いは何ですか。

 

【沓澤糸】両言語の習得が不十分になってしまうことをセミリンガルと表現されていますが、その要因は、環境やいろんな要素が複雑に絡んでいると言われています。

 

バイリンガル教育では「1人1言語の原則」が重要視されており、例えば家庭内で保護者の方が子どもに話しかける言語をそれぞれ1言語に限定し、お母さまは英語、お父さまは日本語といったようにルールを決めることが大切とされています。

 

一方で、言語習得理論では氷山モデルと言われるのですが、表面上は2言語が独立しているように見えても、言語力のベースは1つであり、その土台がしっかり作られていることが大切であるという考え方があります。

 

2言語習得している場合も含め、どちらかの言語で学校の授業についていけるだけの力を持てないと、もう一つの言語も伸び悩んでしまう危険もありますので、まずは母語がしっかりと「思考の道具」として使える状態になることが必要です。

 

――先進国の中で日本の英語力はかなり低いと言われていますが、その原因は何だと思われますか。

 

【沓澤糸】各国の取り巻く環境が違うので単純に比較はできないと思っていますが、まず学校教育の学習時間自体が違う点が挙げられます。

 

韓国や中国は、ものすごい勢いで外国語学習のカリキュラムを増やしています。

 

さらに校外の学習もすごく盛んで、各家庭で英語教育にかなりの投資をしています。

 

その背景として特に韓国は国内マーケットが狭く、英語力が高くなければ将来の給料に大きな格差が生じるため、英語学習への必然性が高いと言えます。

 

それに対し、日本は学習時間も異なりますし、英語力への社会的必然性も韓国ほどは大きくないので、強い目標や目的を持たない限り本当に英語が必要なのか?という疑問に繋がってしまい、せっかく伸びかけた力がそこで中断してしまうこともあります。

 

――今後、日本人の英語力をあげるために必要なことは何だと思われますか。

 

【沓澤糸】私個人としては、英語を使う機会をもっと増やしてあげたいと思っています。

 

自分の英語で外国の方とコミュニケーションが取れたという成功体験があれば、更に英語を学んでいくモチベーションに繋げていくことができます。

 

現在はインターネットを通じて、誰でも簡単に自分の気持ちを自分の言葉で伝えて通じ合うことができる社会になっています。

 

小さいうちから、そういった実践的な英語を使う機会を日本にいながらでも増やしていくことで、長い目で見た時に日本の英語力のかさ上げにも寄与すると思います。

 

国が留学政策も打っても応募者が多くないという問題もありますので、その前段階での経験を積める場がたくさんあり、子どもたちがチャレンジする自信を身に着けることができればいいのではないかと思っています。

2021-05-01 07:00:00

小学校でのプログラミング教育、9割超の保護者が認知・好意的な意見

2021.4.22『EdTechZine編集部』より。

 

ライブルベースは、小学生の保護者を対象に実施した、「小学校のプログラミング教育に関するアンケート」の結果を4月22日に発表した。

 

同調査は、3月9日~22日の期間に行われ、355名から回答を得ている。

 

調査対象者に、小学校におけるプログラミング教育の実施について知っているかを尋ねたところ、認知度(「よく知っている」「なんとなく知っている気がする」の合計)は90%超となった。

 

小学校におけるプログラミング教育の、必修化への賛否を尋ねた質問では、「賛成」が42.0%、「どちらかといえば賛成」が47.6%と、約9割の保護者が好意的に捉えている。

 

小学校におけるプログラミング教育に「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた人に、その理由を尋ねたところ(複数回答)、「今後の社会で必要不可欠な知識だと思う」(62.8%)がもっとも多かった。一方、「将来ITエンジニアになってほしい」という回答は8.2%に留まっている。

 

小学校におけるプログラミング教育に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた人に、その理由を尋ねた質問(複数回答)では、「それよりも他科目もしっかり勉強させたい」「学校で行う意図が不明確」が上位を占めた。

 

小学校におけるプログラミング教育に期待することとしては、「学校や勉強全般に対しての意欲向上」「論理的思考や創造性の意欲向上」が上位を占める一方で、「将来の選択肢が広がる」は0.6%に留まっている。

 

高校までのプログラミング教育に盛り込んでほしい内容を尋ねたところ(複数回答)、「ネット上での個人情報の取り扱い」「ネットで犯罪に巻き込まれないためには」といった、ITリテラシーの向上に期待する意見が多かった。

 

2021-04-30 07:00:00

3つの教育無償化ってどんな制度?対象になる条件は?

2021.4.20『ファイナンシャルフィールド』より。

 

子どもを持つ家庭にとって、大きな負担となるのが教育費です。

 

そこで政府は、できるだけ多くの子どもに教育を受ける機会を与えるためにも、3つの教育分野で無償化制度を導入しました。

 

今回は、3つの教育無償化制度とはどのようなものなのか、誰が対象になるのかを考えてみます。

 

3つの教育無償化ってどんな制度?

 

3つの教育無償化とは、(1)幼児教育の無償化、(2)私立高校の無償化、(3)大学などの高等教育の無償化のことをいいます。

 

具体的にどのようなものなのか、それぞれ確認してみましょう。

 

幼児教育の無償化

 

年齢区分によって所得制限があり、0歳から2歳までは住民税非課税世帯が、3歳から5歳までは原則、全世帯が対象となっています。

 

対象となるサービスは、幼稚園(月額2.57万円まで)、認可保育園、認定こども園、障がい児の発達支援です。

 

保育の必要がある場合には、認可外保育施設と幼稚園の預かり保育も含まれており、0歳から2歳は月額4.2万円まで、3歳から5歳は月額3.7万円です。

 

なお、通園までの送迎費や食材料費、行事に関する費用等は、保護者が負担しなければなりません。

 

ただ、年収360万円未満相当の世帯および第3子以降の子どもは、おかずやおやつ等の副食費用が免除されます。

 

詳細は住所地の市区町村に確認してみてください。

 

私立高校無償化

 

公立高校に加えて、私立高校においても無償化がスタートしました。

 

対象となるのは、公立・私立ともに年収910万円未満の世帯となっており、公立では授業料の一部として11.88万円が授業料の一部として支援されています。

 

公立の学校の場合、費用的にも支援額で賄えますので、実質無償化となります。

 

一方、私立高校の場合も11.88万円が授業料の一部として支援されていますが、所得によって支援額は違ってきます。

 

私立の場合、実質的に無償化となるのは、年収590万円未満の世帯です。

 

利用するためには申請が必要になり、マイナンバーなどの必要な書類が学校に提出すればOKで、2年目以降はマイナンバーを基に都道府県が確認作業を行うため、再申請は不要です。

 

その他、「高校生等奨学金給付金等」という制度もあり、修学支援金に加えて低所得世帯に対して、教科書代や教材費などの授業料以外の教育費を返済不要で支援してくれる制度があります。

 

こちらの制度は都道府県独自の制度となっていますので確認してみましょう。

 

なお、この制度は全日制がベースとなっており、通信制や定時制の場合は、別途、算定されることになっています。

 

大学などの高等教育の無償化

 

高等教育でも、授業料や入学金の免除または減額と、給付型奨学金の支援がスタートしました。

 

対象となるのは、大学、短期大学、高等専門学校(4年・5年)、専門学校ですが、すべての学校が対象ではありません。

 

自分の進学先・希望校が対象かどうかは、文部科学省のサイト(※1)で確認できますので、確認してみましょう。

 

支援の対象となるのは、

 

●世帯収入や資産の要件を満たしていること

●進学先で学ぶ意欲がある学生であること

 

以上の2つの要件を満たしている学生です。

 

支援金額は年収によって違いがあり、昼間に通学している学生と夜間に通学している学生とでは、支援額も違っています。

 

住民税非課税世帯の場合、昼間の私立大学では入学金として約26万円、授業料として約70万円が免除・減額されます。

 

一方、夜間の私立大学では入学金として約14万円、授業料として約36万円が、通信制では、入学金として約3万円、授業料として約13万円が免除・減額されます(※2)。

 

給付型の場合の金額は、国立・私立の区別だけでなく、自宅生か自宅外かによっても違ってきます。

 

また、家族構成によっても年収に違いが生じるため、受けられる支援金も異なります。

 

申込先は、どちらの支援を利用するのかによって変わってきます。授業料等の免除を希望する場合には、進学先の大学等へ申し込みしてください。

 

なお、入学後3ヶ月経過後に申し込むと「入学金」の免除・減額は受けられなくなってしまいます。

 

利用する場合には、できるだけ早く手続きしましょう。

 

給付型を希望する場合には、進学する前年の4月下旬から高校等から日本学生支援機構(JASSO)へ申し込むことができます。

 

教育費にはお金がかかるからと、進学を諦める時代は終わりました。対象者であるのならぜひ利用して、子どもの未来を守っていきましょう。

 

(※1)文部科学省「支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧」

 

(※2)文部科学省「学びたい気持ちを応援します」

 

執筆者:飯田道子

日本ファイナンシャル・プランナーズ協会

2021-04-29 07:00:00

THE世界大学ランキング日本版 東工大躍進の陰に「教育充実度」 在学生の評判にも注目!

2021.4.21『ベネッセ教育情報サイト』より。

 

東北大が2年連続トップで、東京工業大が単独2位に……。英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」が発表した「THE世界大学ランキング日本版2021」には、一味違った大学の順位が現れています。

 

研究力が重視されがちな世界版に対して、教育力を測ろうとしたのが、日本版の特色です。

 

これからの大学選びには、各大学が授業の改善にどれだけ力を入れ、向上させているのかも、注目する必要がありそうです。

 

東工大躍進の陰に「教育充実度」

 

前年の総合トップスリーは、1.東北大2.京都大3.東大、東工大(同率)……でした。それが2021年、京大は4位に後退し、東工大が順位を上げました。

 

THEによると、東工大の躍進には、四つの評価分野のうち、学生や高校教員の声を反映した「教育充実度」(19年25位タイ→20年9位→21年5位)の上昇が大きな要因となっています。

 

近年、わかりやすいニュース解説で知られるジャーナリストの池上彰さんを専任教授(現在は特命教授)に招いたことに代表されるように、幅広い教養教育にも力を入れてきたことが、学生自身にも評価されての結果だと言えそうです。

 

なお、教育充実度分野のトップスリーは、1.国際教養大学2.国際基督教大学3.立命館アジア太平洋大学……です。

 

大学関係者なら納得の「知る人ぞ知る」大学ばかりです。

 

入試改革に先行する「大学教育改革」

 

国内に視野を絞っても、いま日本の大学には、教育の改善を重視した改革が迫られています。

 

「高大接続改革」というと、つい大学入試(大学入学者選抜)改革のことばかり思い浮かべてしまいますが、本来は、大学教育、高校教育、そしてその間をつなぐ大学入学者選抜を、一体で改革することを目指したものです。

 

しかも三つの改革の中では、大学教育改革が先行していました。

 

THEによると、私立大学は「教育充実度」で強みを発揮しています。

 

同分野のトップ50では、津田塾大学(15位タイ→9位)、東京理科大学(22位→12位)、芝浦工業大学(46位→34位)などの上昇が目立つとしています。

 

積極的な大学教育改革が、成果を上げていると見ることができます。

 

文科省も「学生調査」本格実施へ

 

THE日本版に見られる通り、大学の評価には、学生自身の声を聴くことも重要です。

 

文部科学省も、「全国学生調査」の本格実施を目指しています。

 

学生にスマートフォン(スマホ)で10分程度、質問に答えてもらうことで、大学の授業を評価してもらおうというものです。

 

試行調査の第2回は、2021年11月ごろに行われる予定です。

 

現在は全体概要しか公表されていませんが、本格実施になれば、他大学との比較や、経年変化もわかるようになるかもしれません。

 

各大学の改革努力そのものが「見える化」されるわけです。

 

まとめ & 実践 TIPS

 

主な大学入学年齢である18歳人口が減少するなか、各大学には、いい意味での競争が求められています。

 

偏差値や過去の評判に安住し、改革を怠っていては、他の大学に追い越されるかもしれません。

 

THE日本版の結果を分野別などで詳しく見ると、意外な大学名が見つかるかもしれません。

 

これからの大学選びには、無視できない視点になりそうです。

 

出典

 

THE世界大学ランキング日本版2021

https://japanuniversityrankings.jp/topics/00187/

 

文部科学省 全国学生調査

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/chousa/1421136.htm

 

1 2 3 4